2018/11/21

Forfait Anti-pollution

 
  
       

 今年の8月初旬のフランスは暑かった。今年は日本も猛暑。世界的にも暑い年だったけれど、それでも毎年、8月になると暑さも和らいでくるのが常だから、ちょっと油断していた。あ、暑い。。フランスで暑いと何が困るかって、エアコンがないから夜、寝苦しいのだ。湿度が低いからと言っても、やっぱり暑いもんは暑い。。
 
 今回のパリの拠点はヴァカンスに出ているDianeのChâtelet(シャトレ)のアパート。いつも鍵だけ預かって、別宅のように使ってるから勝手知ったる、、だ。いつもは人が誰もいないところに泊まるのが嫌なので、なるべく避ける。今年は私のほかに料理人のMorgan(モルガン)が泊まっていた。シャトレはパリの中心地でシャルルドゴール空港から電車で一本。実は下手に車で移動するよりも楽だ。しかも夏の間、パリ郊外は工事しているところも多く、渋滞も多い。

 さて、私が出発する5日前。突然、夜中に電話が鳴った。『なに、なに?』と寝呆けながら電話に出ると Marieが「あっ、ごめ〜ん。寝てた? モルガンが電話しろって。当日、モルガンが空港に迎えに行くからね〜。おやすみ〜」って。。なに、なに?
 ちょうど私が到着する日、Marieはパリから少し離れた、友人の家のお留守番をしていて、空港から遠くないから車で迎えに行くね、と言っていた。でも、到着は実は朝も朝。7時着予定なうえ、パリの中心に私を送り、また友人宅に戻るのは面倒だな、とたぶん思っていたら「迎えに行ってもいいよ」とモルガンが言ってくれたらしい。行きは荷物がそんなに多くはないけれど、おみやげをぎっしり詰めたスーツケース大ともう一個のスーツケース小を持って早朝、しかも飛行機から降り立ってすぐに電車に一人っていうのも、ちょっとしんどい。というわけでモルガンに迎えに来てもらうことにした。
 しかし、暑〜い。。
 
 電車に乗ろうと切符を買っていると、モルガンの動きがふと止まる。「うんっ? 何だ、これ」すると近くにいたおじさんが「今日は朝から30度を超えていて、大気汚染を防ぐために車に乗らずに過ごそうってことで安いチケットがあるんだよ」よく見ると『Forfait Anti-pollution』と書かれてある。直訳は『汚染防止のための割引券』ってことだ。きゃー、おじさん、ありがとう。普段なら10ユーロかかるのに3.8ユーロでパリまで行けた。「あ〜、行きも知ってたら。。」あー、そうなのね。。モルガン、残念。。
 
 

   Dianeのアパートの通りにはこんなお店。
  ネズミが。。
 

2018/11/18

MarieとMarie


 


 ここ数年、フランスへ行くのは夏。息子の学校の夏休みに合わせて、ってこともあるけど、フランスの友だちもヴァカンス中だから、ってことも理由のひとつだ。友人たちはその年によってヴァカンスの期間や行く場所も違うから、私も毎回、誰とその年を過ごすかは決めていない。いつも、行き当たりばったりの旅だ。

 Marie-Franceとは、もうすでに20年近くの友人だ。Dianeたちのママでブルターニュに暮らす Marieとは、違うMarieだ。本業はジャーナリスト。本も出していて、最近知ったけれど なかなかに名を知られているジャーナリストらしい。

 私が初めてMarie-Franceに会ったのは、違うMarieのブルターニュの実家を初めて訪れたとき。親戚がいっぱい来ていて泊まるスペースがなく、そんな私たちにMarieが見つけてくれたのが、Marie-FranceのやっていたChambre d'hôtes(シャンブル ドット)。いわゆる民泊みたいな感じ。普通のおうちの一部屋に泊まらせてもらうから、普通のホテルとは違い、アットホームな感じが魅力のひとつだ。たまたま泊まったのがMarie-Franceの家で、そこから仲良くなった。ついでを言えば、Marie-Franceの初めての客が私たちだったのだ。それから、しばらく毎年のようにMarie-Franceのシャンブル ドットに泊まる。そんなこんなで仲よくなった私たちに 今となっては最後になった宿泊のとき「私たちは友人なんだから、お金は要らないわ」と宿泊費をタダにしてくれた、そんな間柄。
 そのあと、しばらく息子のサッカーやら何やらでフランスに行くことができず、そうこうしている間にMarie-Franceはそこを売って、同じ地域のより海に近いお家を買って引っ越したらしい。そこには今度行く約束をしたけれど、前のお家もほんとにステキだった。さて、なぜそこを売っちゃったかというと、今までは夏はそこ、そのほかはスイスのお家にいたのを、今回 私がおじゃましたBourgogne(ブルゴーニュ)には夏の間 滞在し、9月の中旬からブルターニュの家に移動するというライフスタイルに変えたから。ここ数年、私が夏行くからブルターニュで会おうとメールしても お互いの予定が合わなかった。というわけで 今回、ブルゴーニュの家に誘ってくれたのだ。

 さて、ちょっとした疑問が浮かぶ。北部にあって、夏でも肌寒いブルターニュに秋から冬にかけてなぜ滞在するの? と。。「ブルゴーニュはお天気もよくて プールもあるから、夏の間 過ごすには最適なの。でも冬は雪が降って積もるのよ。だから、冬は寒くても雪の少ないブルターニュで過ごすの」ほーっ、なるほど。

 さて、プール、プールと簡単にいうけれど、お家にプールがあるって、やっぱりすごいわ。今はアイルランドに暮らす Isabelleの実家にもプールがあったけど、あれはIsabelleの両親の家だったから、あら、実家お金持ちだね〜ぐらいだったけど。。しかし、季節によって家を移動するって、理想的だなぁ。
「ねぇねぇ、プールって高いでしょ?」
「高級車1台分くらいだから、そうでもないよ」
 おー、そんなこと 言ってみたい。








2018/11/13

EDF

 今年のフランス滞在もいろんなことがあったけれど、これまた衝撃だったのが、ブルターニュでの事件。毎年のようにブルターニュに訪れる私だけど、今年はMarieの家に宿泊。離れの部屋に泊まったことはあっても母屋に泊まるのは初めて。ここは、元々はMarieの両親の家。ヴァカンス中にここに来ると、Marieの姉妹や子どもたちが集まってきていたので部屋の空きがなく、息子はみんなとここに泊まり、私たちは別に泊まることが多かった。今回は私とMarieのふたりだけだったから、広々と使えた。

 滞在 二日目のこと。ブロカントや友人たちと会う間を縫って、一旦家に戻った。この夏は家の改装や庭の手入れを予定していたらしく、この日も大きな木を一本切るため、業者と待ち合わせたのだ。「すぐ終わるから、部屋で昼寝でもしてて」と言われ、ベッドで横になりつつ、テレビを見ていた。しばらくすると、テレビが突然切れる。うん?? あれっ、何で?  Marieに確かめようと部屋を出たら、同じくしてMarieがバタバタと外に走っていく。よく見ると、大きな木が何かに引っかかった状態で倒れかかっていた。
 Marieの家の庭は広く、家の敷地の中に数本、電柱が立っていて、電線も通っている。その電線に大きな木がしなだれかかっていたのだ。いやいや、ありえない光景だった。一体、何が起こったのかわからないまま、Marieと業者の2人組に近寄った。「どうしたの。テレビが映んなくなったよ」お察しの通り、木を切ったら思わぬ方向に倒れ、そこに電線があって、そして電線を切っちゃった、っていう。。ていうか、あり得ない。。業者のおじさん二人組は切ったらたまたま、電線に引っかかったよ、みたいな顔で悪びれもせず、早くEDF(ウーデーエフ)に電話した方がいいと言っている。EDFとは東京電力みたいなところ。Marieは唖然としながらも、すぐに電話をかけ始めた。私は頭んなかで整理しようと倒れた木を見つめた。どう見ても、業者2人組のせいでしょ。そこに電線があることは一目瞭然。反対側に倒れるように切るのがプロとして当然でしょ。電話をしているMarieに近寄って、そう伝えた。

 Marieが電話を終えてEDFの修理が夜まで来れないこと、現場で何が起きたかを検証するため、あと1時間ほどで調査員が来ることを言った後、ぼそりと修理費用のことを言った。何と、修理費は6000ユーロ。。えーっっ。「これ、誰が払うの? 業者さんって会社に所属してるよね。保険、おりるんじゃない?」するとMarieはこう言った。「ウチの敷地内で起きて、自分がお願いしてこうなったの。だから私が払うしかない。。」「えー、でもどう考えたって、あの2人の落ち度だよね」「こんなに狭い村でしかも彼の紹介なの。けが人が出なかっただけでも、よかったと思わなきゃ。。もし、電線が当たってたら、死人が出たかもしれないし」確かに。。
 ついさっきまで私も庭のテーブルでお茶を飲んでいた。もし、外にいたら当たっていたかもしれない。でも納得いかない私はMarieに何度も訴えてみる。「Bertrand(Marieの彼氏)に言ってもらおうよ」「電話したけど、どうにもならない」「じゃぁ、Xavierに相談しよ」と冗談めいて言うと、Marieは「今、コロンビアにいるから無理じゃない」と冗談で返してきた。コロンビアにヴァカンスに出かけているXavierはMarieの息子で弁護士なのだ。あ〜。。
 その後、調査員やら修理の人が来て、電線が直るまでバタバタとし、木の伐採作業が途中になっていたので、電気が開通してまた作業を開始した時にはヒヤヒヤしたけど、何とか無事に終わった。
 どう考えても納得いかないけれど、Marieがそうすると言っているんだから仕方がない。少しでも元気づけようと晩ごはんは外食にし「私がおごるから〜」と言って、お腹はあんまり空いてなかったけれど、一日を潰して申し訳ないとヘコむMarieを前にがんばってムール貝をタラフク食った。それで悲劇が起きるなんてことをつゆ知らず。。






2018/11/12

la guêpe

 久しぶりにブログを書こう、と蜘蛛の巣と足長蜂を見て思った。
 最近、サロンの周りを足長蜂が飛び回っている。おかげで窓が開けられない。と言っても、晴れた日の午後しか活動していないからわかりやすいのだけれど。

 今日、お客さんとお茶を飲んでいるときに、ふと何かが浮かんでいるのが見えた。うん?? 浮かんでいるんじゃなくて、蜘蛛の巣が向かいのお家からウチのサロンの欄干に向かって、張り巡らされているのだ。その距離、3mはあろうかと。。
 直ぐさま、蜘蛛の糸を切ってやろうと思ったけれど、思いとどまる。もしや、この蜘蛛は、そこが足長蜂の通り道だと気づき、わざわざ巣を張って待ち伏せしているのでは。。まんまと一匹、何かが引っかかった模様だ。

 今年のフランス滞在は親子揃ってハチから逃げ惑う、そんな滞在だった。フランスではここ数年、ハチがハエのように飛んでいる。Boulangerieのパンに何匹も群がり、公園でサンドイッチを食べようものなら背後から狙ってくる。ある日、息子は友達とパリのcaféでお茶しているときに突然、刺された。私は唖然。。息子も生まれて初めてハチに刺され、ちょっとパニック。その後、事なきを得て、とりあえずは大丈夫だった。でも、次の日からロンドンに留学だったから、ちょっと心配だったけれど、何日かしたら息子も私もすっかり忘れていた。

 そんなある日がまた突然、やってきた。。Bourgogne(ブルゴーニュ)の友人夫婦の家に遊びに行ったときのこと。お天気がいいからと友達の家のプールで優雅な時間を過ごしていたときのことだ。友達の家にプールがあるってことを突っ込まれそうだけど、そこはまた書くとして、とにかく、プールに浮かんでいた浮き輪にハチがこれまた、優雅にかどうかはわからないけれど、止まっていたらしい。そして、知らずに手を伸ばした私の手首に命中した。
 ひえ〜。チクっとしたと同時に手首を見ると、黒い針が見事に刺さっていた。すぐに針を抜き取り『ハチに刺された〜』とプールから飛び出る。
 Marie-Franceが蜂に刺されたとき用のキットをすぐに持ってきてくれて、患部を吸引してくれ、その後、薬を塗ってくれた。「もう一回刺されたら、私、死んじゃうんじゃない?」「大丈夫、こんな程度のハチだったら、7、8回刺されても死なないわよ」と言ってもらえて、ちょっとホッとしたけど、3時間くらいはヒリヒリと痛かった。

 その後、パリに戻ったら友達が2人も刺されて、今年はハチに追われて怯えた、そんなフランス滞在だった。でも、蜜蜂(abeille)は減っているらしく、ニュースでも流れていて、深刻な社会問題になっている。私が刺されたのは小さなguêpe(ゲップ)。

 というわけで、足長蜂を狙っている蜘蛛をしばらく応援することにした。


 


  


 プールの向こう側はこんなぶどう畑。なんて贅沢な空間。