2014/05/23

GUERRISOL


 パリに暮らしていた頃、まだ通貨はユーロではなく、フランだった。1F(フラン)が20円にも届かないほどで、物価もかなり安かった。
 あの頃、蚤の市に行くのと同じくらいはまっていたのが、Montmartre(モンマルトル)界隈にある、GUERRISOL(ゲリソル)。古着やさんなのだが、おしゃれな感じは微塵も感じられない倉庫みたいなところに、ハンガーラックやワゴンが並んでいる。ほとんどが「げーっ、何、この服?」って感じなのだが、時々、メゾンのヴィンテージのコートやらスカーフが、変なものに混じって売られていたりしたのだ。しかも、10Fだったり20Fだったり、驚きの値段で。布ものも充実していて、今でこそ、おしゃれな古着屋さんで売られているようなデッドストックのカーテンやシーツが、5Fのワゴンセールで店頭に並んでいた。私は足繁く通い、そんな物たちに囲まれて生活していた。
 
 パリは、家具付きアパートも多く、荷物が少ないので、電車やバスでの引っ越しが、私たちのまわりでは普通だった。何回かに分けて運ぶのだが、最後の日まで使っていたシーツやお布団カバーは最終の荷物の中に入れるはずだった。ちょうど、その日は引き渡しの日で次の人にはそのことも伝えてあった。しかし、ベッドの上にきちんと畳んでおいた、シーツと布団カバーがない。「あの、ここに置いておいたものは?」「あっ、捨てました」「えーっ?」「そんなに高いものだったんですか?」「。。。」そりゃー、ゲリソルの5Fのシーツと布団カバーで安いけど、お気に入りのしかも一点ものだぞ〜。。と言いたいところだったが、わかる人にしかわからないものもある。泣く泣く、涙を飲んだ。うーっ、悲しかった思い出。。 

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