2014/08/31

Bises


 フランスでは挨拶の時、頬と頬を左右1回ずつ合わせる、Bises(ビズ)を交わす。地域によっては計3回、4回のところもあるけど、ほとんどが2回だ。
 どちらの頬からという決まりはないけど、右頬、左頬、どちらも相手の頬と軽く合わせて "チュッ、チュッ”と音を出す。家族同士、仲の良い友達、そうでなくても面識のある友達、初めて会うけど仲のよい友達の友達とか、子供は初めての人にもとか、とにかくビズするのに決まり事はない。基本的には大人の男の人同士はビズすることは少ないけど、しばらく会えないとか、そんな時にはビズする。
 
 日本人には、なかなか慣れないこの挨拶、息子は物心ついた頃から日常的なものとなっている。久しぶりに会う友達には、すばやく駆け寄ってうれしそうにビズするし、しばらく会えなくなるお別れのビズは、しっかり抱き合って離れ難い。相手に対する気持ちや感情がはっきり出るビズは、言葉少なでも分かり合えるし、すばらしいものだなと思う。

 今でも躊躇することなく、日本でもどこでも、この挨拶を交わせる息子。フランスやフランス人からもらった、ステキなプレゼントだなと思う。
 まっ、真夏の汗ばんだ頬と頬はちょっと嫌かな、と思う時もあるけど、お互いにねっ。

2014/08/30

試着


 フランスで買い物に出かけた時、こんな光景を時々見かける。試着室に入らず、その場で着ちゃってる人を。
 
 高級店とか、さすがにできないし、そんなことをするのも、はばかれるけど、ちょっとしたお店なら平気で脱いで履く、脱いで着る。最近はすぐ注意されるので、だいぶ減った気もするけど、それでもたまに見かける、こんな光景。
 モンマルトルの生地屋街や郊外によくある、アウトレットのお店。普通に買うと結構な値段のする服が、格安で売られている。少し穴があいていたり、色落ちがあったり、いわゆるB級品だ。タグがついたままのものもあれば、タグが乱雑に切られたものもある。こういうお店にはいつもたくさんのお客さんがいて、ものすごい勢いでワゴンの中を物色し、服があっちからこっち、いろんなところへ飛び交っている。よいと思ったものは手元に置き、また探す。ここまでは、どこにでもありそうなSolde(ソルド)の光景だけど、ある程度、物色し終えると、隅に行って試着し始める。女性しかいないとわかると、脱ぎっぷりもすごい。他人の目はどうでもいいらしい。ちょっと前までは、H&Mとかソルドでもないのに、こんな感じだった。フランス人女性は男前だな。なかなか、真似できない。。 

2014/08/29

尽くし上手



 お呼ばれの際にワインやケーキ持って行くことが多いけれど、お花を持って行くと喜んでくれる友達も多い。でも、どんなものをもらってもあげても、気持ちがこもっていれば何でもうれしいものだ。
 
 フランスへ行くと、あげることよりも、もらうことのほうが多い。友達 Elianeの家では「このかご、かわいいね」なんて言うと、中に入っていたものをひっくり返して「はい」と渡され、EricとSophieの家では「この紅茶、どこで買ったの?」「このコーヒープレス、便利だね」と言えば、「はい、紅茶、半分こ」「コーヒープレス、もう一個あるから」と手渡される。何でもくれちゃうから、迂闊にこれいいね、とか言えない。前に話してたこともよく覚えていて、Marieから何かが送られてきたと思うと、私の好きな雑誌だったりと、びっくりさせられることも多い。
 
 ある時、Elianeからメールが届いた。日本人と結婚した男友達が東京に行く時に、荷物を託すから受け取って、と。とはいえ、どんなものかは聞かず、荷物を持って来てくれたふたりとの待ち合わせ場所に。その荷物の大きさにびっくりした。アーミーパンツが2本、部屋の天井や壁に飾る照明セット、あと諸々、いろんなものが詰め込まれていた。私たちの好きなアーミーパンツに、照明はElianeの家に飾ってあったものと同じで「かわいいね、これ」と私が言った言葉を覚えていたのだ。パリから、この荷物を。。申し訳ないやら、でもElianeの気持ちはうれしいやら。。フランス人、仲良くなればなるほど、尽くし上手。

2014/08/28

ストール


 暑かった日々から一変、ここのところ、上着が欲しくなるような肌寒さだ。この感じがブルターニュの夏に似ている。
 
 ブルターニュの夏は短く、朝晩は羽織るものが一枚必要だ。日本人はそんな時、カーディガンとか、袖を通すだけですぐ着られるものを選ぶことが多いけれど、フランス人は被るものを持っていることが多い。
 例えば、薄手のpull-over(プル オーヴァー)『セーター』を好む人が多い。気温の低いブルターニュの朝晩は、それぐらいでちょうどいい寒さだ。なぜ、脱ぎ着が面倒なセーターなのか? ちょっと疑問だけど、脱いでいる時は腰や肩にかけている。
 あとはやっぱり、ストール。さりげないけれど、巻き方が絶妙にうまい。日本でも、当たり前のように巻くようになったストールだけど、フランスでは、若い男子も、ずいぶん前から気軽に巻いている。地方に行くと、おみやげやさんの一角に、絵はがきやチョコレートなどと一緒に、色とりどりのストールが売られている。寒くなったら、手軽に買えるように手頃な値段。でも、これが意外にかわいいものもあるから要チェックだ。

2014/08/27

Félicitations!


 初めて会ったのは、かれこれ14年前。Eveがまだ、小学生だった頃だ。出会ってから、しばらく文通していた私たちは、遠く日本からやって来た大人と、ノルマンディーに暮らす、恥ずかしがり屋の女の子という関係だった。数年後、ノルマンディーの実家を訪れると、すっかり大きくなったEveは、彼と一緒に帰って来た。目をキラキラさせて「日本ってどんなところなの?」と聞いてきたEveも大人に一歩近づいていた。

 そんなEveが、5年前、Aliceと一緒に日本にやって来た。初めての海外旅行が日本だったEveは、すでに二十歳の立派な大人になっていて、Aliceと共に東京観光を楽しんだ。
 ちょうどその頃、”やっぱり、またパリへ行こう!”の大詰めに差しかかっていた私は、時間的にも気持ち的にも余裕がなく、なかなか一緒に出かけてあげられない日が続いていた。
 ふたりはどんどん東京に馴れていき、日に日に帰りが遅くなっていった。心配だった私は、はじめはやんわり言っただけだったけど、10日ほど経った頃にかなり怒ってしまった。Aliceは少し日本語が理解できたけど、ほとんど喋れない若い女の子が、夜な夜な六本木を遊び歩くなんて、何かあってからでは困る。とりあえず、帰りは必ずタクシーで帰らせたけど、夜遊びは一向に収まらず、何だかいやーな空気のまま、ふたりの滞在は終わった。

 親代わりのつもりで心配だった気持ちと、羽目を外させてあげればよかったかなと思う気持ちが半々だったから、正直、再会するときはドキドキした。ちょっとぎこちなかったような気もするけど、すぐに元の私たちに戻った。女の子がいると、こんなに心配なのね。そんな、子供の頃から見てきたEveが、若くしてママになった。不思議だけど、ほんとにほんとにうれしい。男の子みたいだ。よかったね、女の子だと心配よ、Eve。

2014/08/26

息子


 パリでお腹の中にいた息子は、3歳の頃から毎年、フランスで過ごした。小学校に上がるまでは季節のよい5月、6月頃に、小学校に上がってからは夏休みのほとんどをフランスで過ごした。
 小さい頃の記憶は 曖昧で、覚えていることもあるけど、記憶がおぼろげなこともあり、いつの年のことなのかとか、頭の中でごちゃごちゃになっているらしい。ちょっと残念だけど、仕方ない。私たちも、時系列がはっきりしないことが多々ある。
 でも、子供の記憶って不思議だ。変なことを覚えていたりする。友達の家で食べたこんなものがおいしかったとか、特別ではないけど、ほんとに素直に感じたままが、ほんとの記憶なのだ。
 気付くと、私たちを通り越して、フランスを違った角度から見ていることに気付く。人それぞれ、フランスに対する想いや好きなところは違う。私はひとり旅でフランスが好きになり、ひとりで暮らし始めて、フランスがフランス人が大好きになった。息子は小さい頃から私たちに連れて行かれ、大きくなったら、どんな風にフランスと向き合うのだろうと思っていた。そんな息子も今日、17回目の誕生日を迎え、ますますフランスが、フランス人が大好きな男子に成長した。ここしばらく、フランスの地を踏んでいないけれど、次にフランスへ戻った時は、きっと今まで以上にフランスを、フランス人を好きになるだろう。その時が今から楽しみだ。

2014/08/25

大きな足


 テレビを観ていたら、足の人差し指が異様に長い人が出ていた。息子曰く、ヨーロッパの人に多くみられる足の形らしい。
 そういえば、フランス人の友達の足を思い出してみると、親指よりも人差し指のほうが長くて、足の幅は狭く、少し外反母趾気味の友達が多かった。散歩に出かけると足が疲れやすく、靴選びも大変だろうなと思った記憶がある。足のサイズも大きい友達が多く、Marieの家の玄関先には、いつも大きな靴がゴロゴロしていた。
 
 Marieの娘、Aliceが小学生の低学年だった頃、1年間、日本の公立小学校に通っていたことがある。短いおかっぱ頭で赤いランドセルを背負うAliceは、それはそれは可愛かった。道を歩くと、すれ違う人が「かわいい、かわいい」と連呼し、モデル事務所にも所属していた。そんなAliceのちょっとした悩みは、足のサイズがその頃すでに、25.5cmとか26cmあったこと。赤いラインの入った学校の上履きがどこを探しても足に合うサイズが見つからず、半べそをかくAliceを、つい昨日のことのように思い出す。はて、あの時、どうしたっけ? 見つかったのか、そうでなかったか。。切実だけど、かわいい悩みだな。

2014/08/24

Attila Marcel


 今日は、息子とフランス映画『ぼくを探しに』を観に行った。幼少時期に両親を失ってから言葉を失ったPaulは、伯母姉妹に育てられた。両親の記憶がおぼろげなPaulは、同じアパートに住むマダムとの出会いで、少しずつ記憶が蘇っていく。
 “Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain”『アメリ』のプロデューサーの作品と聞いて、なるほどの映像だ。コメディータッチでフランス的なブラックユーモアもあり、笑って泣ける映画だ。
 こんな伯母姉妹みたいなマダムいるなぁとか、Paulがシューケットを袋から取り出して食べたり、さくらんぼの種をプッと出したり、そうそうフランス人ってこんな感じと、頷いてしまう映画。夢と現実が曖昧で、途中、Paulの奏でるピアノが、彼の心を表しているようで引き込まれていく。楽しそうに聞こえた伯母姉妹の歌声も、映画を見終わった後はちょっぴり切ない。映画と音楽はやはり一体だ。  

2014/08/23

Liptonic


 フランスには冷たいコーヒー、いわゆるアイスコーヒーはない。コーヒー好きの私は毎日のようにコーヒーを飲んでいるが、暑い日が続くと冷たいのをググッと飲みたくなる。アイスコーヒーを飲む私を見て友達のDanielleは「冷たいものが飲みたいなら麦茶でも飲めばいいのに」とよく言っていた。フランス人はうだるような暑い日でも、熱いコーヒーを飲む。確かにそうなんだけど、コーヒーも冷たいものも両方飲みたいからこうなってしまうのだ。
 
 パリでも、紅茶であれば缶やペットボトルのものが、スーパーでも売られている。一般的なCaféでアイスティーを頼むと、この缶やペットボトルが、グラスと一緒に出てくる。おいしいアイスティーを飲みたいなら、専門店に行くしかない。
 先日、偶然 ”Lipton”から出ている”Liptonic”(リプトニック)を見つけた。パリに暮らしている頃、パリのスーパーに必ず置いてあり、人気があった炭酸アイスティーだ。一時、はまって飲んでいた。その後、パリに行った時、スーパーで探してみたけど、なかなか見つけることができず、しばらく飲んでいなかったのだ。そんな、恋い焦がれた『リプトニック』を日本で飲むことができるなんて。味は、ピンクグレープフルーツ味でちょっとクセがあるけど、暑い日にぴったり。炭酸コーヒーは無理だけど、炭酸紅茶はイケてる。

2014/08/22

アート


 パリに暮らしている頃、古着が大好きで蚤の市や古着屋さんに足繁く通った。一点ものっていうのが魅力だし、とにかく安い。その頃、ジャージや花柄ワンピースが大好きで、そんな恰好ばかりしていたのだけど、これがまた、動きやすく、汚れても気にならない。ちょっと気になることといえば、古着特有のにおいだ。日本の古着よりもにおいがあるかもしれない。洗濯できるものは、とことん洗濯しちゃう。皮のワンピースとかジャケットも格安だったので、ダメ元で洗ってしまう。これが意外に平気なのだ。そうそう、フランス人も何でもかんでも洗っちゃうのはおんなじだ。

 ある時、”Palais de Tokyo”(パレ ド トーキョー)のあるアーティストの個展で、古着を山のように積み上げる、そんな作品があった。私の大好きな花柄のワンピースが山のようにあり、少しずつしか見えてないけど、私好みのものが多い。それ自体がアートなので、ほんとは言っちゃいけないと思いつつ「あのワンピース、かわいいですね」「欲しいの?」「えっ、いいの?」「いいわよ、どうぞ」というわけで、一枚抜き取ってくれた。そんな簡単にくれちゃってよかったの? 一体、あれは何のアートだったのか。。

2014/08/21

OTAKU


 フランス人は映画好きが多い。フランスの有名チェーン店の”FNAC”の売り場では、真剣にDVDを選んでいる人に出くわす。フランスはDVDの値段も手頃で、2枚買うと3枚目がタダとか、ちょっとお得な買い方をすれば、最新とは言わなくても、そこそこ新しい映画も安く手に入る。古い映画はかなり格安なので、欲しかった映画が見つかればラッキーだ。フランス映画はもちろん、お気に入りの他の国の映画も、フランス語で観ると新鮮でまた楽しい。息子が小さい頃はフランス語の勉強のためにアニメ映画もよく買った。

 さて、FNACでいつも遭遇するのが、日本のアニメのDVDを何枚か手に取って吟味している若者だ。裏表、何回も見直し、何枚かを見比べている。日本でも人気のある、有名な監督の作品が一番人気のようだ。どのDVDもお手頃価格なのに、その監督のアニメはかなりお高い。そのせいか、選ぶのにかなり時間をかけて買って行く。
 日本のアニメやマンガはフランスでも大人気だ。私が住んでいた” rue keller” にはマンガ好きな人たちが集まるマンガショップもあり、数々の日本のマンガがフランス語版として売られていて人気だ。ひと昔前は”おたく”と言えば、何か暗い感じがしたけど、フランス人の”OTAKU”は、純粋にアニメ、マンガ好きな人たちってイメージだ。なぜか、フランス人に「OTAKUなの〜?」って聞くと、ちょっとみんな喜ぶのは気のせい?

2014/08/20

アーミーショップ


 暮らしていた頃、よく通ったMontreuil(モントルイユ)の蚤の市。パリの蚤の市の中で一番、ガラクタの多い蚤の市だ。可愛い雑貨や状態の良いものは、他の蚤の市に任せて、こちらではアーミーものを狙う。ちょっとかわいいブルゾンやTシャツ、何でも入るズタ袋など、手頃な値段で手に入る。一時期、毎週のように通い、格安で掘り出し物を見つけていた。そのころの戦利品は今でも我が家には残っているし、まだ使っているものもある。

 今はあまり見かけないけど、その頃、町を歩く人の多くがアーミーのコートやブルゾンを着ていて、同じように見えるけど、ちょっと違うかっこいいものを見つけるのが楽しかった。アーミーものは手頃で、何より、丈夫だということが一番の利点だ。
 フランスは蚤の市以外にも、アーミーものを扱うお店が密かにあって、掘り出し物が見つかる。普段あまり行くことのない界隈、モンパルナスの駅向こうにある“Doursoux"(ドゥルス)もそう。わかりづらい場所にあり、付近の道もややこしくて、何度行っても覚えられない。11区にもお店ができたらしいけど、やっぱり、モントルイユの蚤の市がゆるーい感じがしっくりくるな。  

2014/08/19

オムレツ


 フランス、Mont-Saint-Michel(モン サン ミッシェル)の名物料理、オムレツ。モン サン ミッシェルでは食べたことはないけど、Nantes(ナント)に遊びに行った時、Claudeに「食べたことある?」と聞かれた。噂には聞いていたフワフワのオムレツ。「食べたい、食べたい〜」というわけで、Claudeに作ってもらった。

 卵をボウルに割り、塩、胡椒、砂糖を入れて、泡立て器でよーく混ぜるのだけど、ふわっふわに混ぜた卵をこれまた、ふわっふわに焼く。押さえたり、ひっくり返したりもせず、弱火でじっくり、片面焼けたところで、半分より少しずらして折り、そのままお皿にふんわり載せる。これが、想像以上においしい。ちょっとケーキ感覚だ。シンプルな味付けで、一度食べるとまたすぐに食べたくなる、そんなおいしさ。
 ここまでふわふわに焼くためには、よく混ぜるのが一番大切だけど、手動だとここまでふんわりならない。そういえば、友達のDanielleはケーキ作りが得意で、手際もよく、作り始めると、あっという間にケーキは出来上がってしまう。「なぜ、日本人は、電動などの便利な道具を使いこなさないの? 」そうだっけ? あぁ、でも、何でも手でやってしまいたくなるかな。道具を使うと、料理の後の片付けも大変なんだよなぁ。
 でも、あのオムレツの泡立ては、電動ミキサーでしっかり泡立てないと、手で混ぜきるのは無理かも。。

2014/08/18

パスタ


 フランス人との食事は、おしゃべりしながらのんびり過ごせる、楽しいひとときだ。コース料理さながら、前菜、メイン、チーズ、デザート、と順に出てくるので、ワインを飲みながら、たっぷり時間をかけるのだ。
 ヴァカンス時期のように時間も余るほどあれば、どんどん食事の時間も伸びてくる。そんな時、子供たちは子供たちで食事を済ませ、その後、心置きなく大人たちの時間が始まる。
 
 さて、子供たちもバゲットは毎日食べる主食だし、大好きだけど、時々、バゲットの代わりにパスタが出てくる時がある。アルデンテには程遠い、ブツッと切れそうなくらい、柔らかくなってしまったパスタに、バターと塩、胡椒のみで味付けされた、まさしく素パスタなのだ。
 初めてこれを見た時は、この後ソースがやってくるのだろうと思っていたのだけど、どうもそういうことではなかったらしい。もちろん、メインに肉とか、ちゃんとあるわけだから、要するに主食の代わりなのだ。これは、どの家庭でもそうだったから、一般的に浸透している、れっきとしたパスタ料理なのだ。
 基本的的にパスタのみがテーブルに出るのをあまり見ない。パスタが出てきても、市販の瓶詰めのアラビアータとかをポンと載せる、簡単パスタだ。フランスのレストランで何度か食べたイタリアンも、おいしかった記憶がない。おいしい多国籍料理が食べられるフランスでイタリアンだけは。。

2014/08/17

クセ


 当たり前だけど、子供たちはどんどん大きくなる。でも、大きくなっても小さい頃からのクセは治らなかったりするものだ。

 フランス人に多く見られるのは、大人になっても爪を噛む人。もう、その噛み方や半端じゃない。深爪どころか、そのまわりの皮も噛んじゃって、本来の爪の原型を留めず、指先にちょこんと申し訳なく爪が載っているだけの人もいる。
 小さい子供ならまだしも、大人の、しかも男の人にも多く見られる。仕事中でも気を抜くと出てしまうのか、スーツ姿の男性が平気で爪を噛む姿は、ちょっとびっくりしてしまう。女の人もけっこういて、そういえばよく見ると、ペディキュアはきちんと塗られているのに、爪を伸ばして、きれいにマニキュアを塗っている人は多くはない。
 フランスの薬局では、爪を噛むのを止めるために、舐めると変な味のするマニキュアみたいに塗っておくものも売られているらしい。そんなものぐらいで、ほんとに止めれるのだろうか。ちなみに、かなり大きくなるまで、指しゃぶりが止められない人も負けず劣らず、多い。。フランス人よ。。

2014/08/16

Repetto


 麗しのセルジュ ゲンズブールも、ジーンズにかっこよく履きこなしていたというRepetto(レペット)。さすが伊達男のセルジュ、フラットシューズ”Zizi”を裸足でかっこよく履きこなしていた。
 日本でも、人気の高いレペット。Opéra(オペラ)近くの本店は煌びやかで、何だか敷居が高い。繊細なバレエシューズだけに、履くのも厳かな気持ちで挑まなければいけない気がして、私にとっては、大人の女性の靴すぎて手が出ない。

 何年か前、雑誌を開けばどの雑誌にもレペットが出ていて、一度履いてみないと気が済まない気持ちになった。できれば、パリの本店で試してみたいけど、買う気がないのに冷やかしでは行けない。
 ちょうど、そんな時、モンマルトルに住む Laurenceと散歩に出かけた。サクレ クール寺院の麓から rue des Martyrs(リュウ デ マルティール)『マルティール通り』を抜けたところにレペットのアウトレットのお店があったはず。「レペットのアウトレットのお店がこの通りにあるから、行きたいな」「何のお店?」「レペット」「うん?」なかなか、わかってもらえない。フォトエディターのLaurenceはおしゃれさん。まさか、レペットを知らないなんて。。何度か発音を違えて言ってみて、やっと「あ〜、Repetto(レペト⤴️) ね」日本であまりにも流行り、日本でばかり、この話題が出ていたので、思わず日本語読みの『レペット』と言ってしまっていたのだ。やっと通じたのに、そのお店は定休日だった。残念だけど、やっぱり縁がないのかも。。 

2014/08/15

Fondue bourguignonne


 夏バテしないようにと、昔の人は『土用の丑の日』を作った。元来はそういう理由ではなかったようだけど、とにかく夏を乗り切るために鰻を食べる。

 ここのところ、涼しさを感じるとは言え、今日のようにガンガン暑いと、食欲モリモリというわけにはいかない。
 フランスでは、暑い時こそ、パワーの出る肉を食べる。さて、その食べっぷりもすごく、ほんとに気持ちいい。お肉の種類も食べ方もいろいろあるけど、Fondue(フォンデュ)で食べると、何か、肉食べてる〜って感じがする。フォンデュと言えば、チーズフォンデュがパッと思い浮かぶけど、チーズでなく熱した油に肉や野菜をくぐらせて食べるのが、”Fondue bourguignonne”( フォンデュ ブルギニョンヌ)。さいの目に切った野菜も食べるけど、肉、肉、肉、野菜、肉といった具合でほとんど肉ばかり食べている感じだ。そして、ワインとチーズ。これが、フランス人の元気の源。どちらかと言えば、チーズフォンデュのほうが好きだけど、たまにはこんな肉料理もよし。

2014/08/14

La Roche-Guyon


 フランスは、正直、どこに行っても美しい村ばかりだし、似た感じに見えてしまい記憶が混同してしまうこともある。村名を即座に頭にインプットしなければ、忘れてしまうこともある。暮らしていた頃、車で旅した時、小さな村にたくさん立ち寄ったけど、そんな中、名前も覚えていない村もある。ちょっと、もったない気もしていて、もう一度、そこを訪れて記憶を取り戻したい気分だ。

 ここは、パリから車を走らせること1時間ほどの、北西部にある“La Roche-Guyon”(ラ ロッシュ ギュイヨン)。“Les plus beaux Villages de France”『フランスの最も美しい村』にも選ばれている。圧巻は、石灰岩の山の岩肌が一部になっていて、ちょっとやそっとでは、崩れないそんな佇まいの城。城だけでなく、山の一部が洞窟のようになっていて、ワイン蔵やガレージとして利用されているらしい。イル ド フランス圏内唯一の『フランスの最も美しい村』に選ばれている村なので、行ってみる価値はある。
 
 さて、またしても、ここでBrocante(ブロカント)を見つけてしまい、アンティークの琺瑯の鍋を買ってしまった。旅に出ると、つい立ち寄ってしまうブロカント。つい先日も、温泉帰りに立ち寄った古道具屋でお皿を見つけてしまった。私にとって、旅=ブロカントだな、どこへ行っても。。そのほうが、記憶にしっかりと刻まれる。

2014/08/13

Parc de la Villette


 息子が小さい頃、何度か出かけたParc de la Villette(パーク ドゥ ラ ヴィレット)。パリの北東19区にあり、パリ市内でもっとも大きな公園だ。
 Cité des Sciences et de l'Industrie(シテ デ シオンス エ ドゥ アンデュストゥリー)『シテ科学産業博物館』、世界最大級のピンホール式プラネタリウムや本物のフランス海軍の潜水艦も展示されていて、内部が見学できるようになっている。”Féte de la musique”などの音楽イベントが催される音楽施設や公園内には大きなオブジェがあったりと、大人も子供も楽しめる場所なのだ。
 息子の一番のお気に入りは、作業服とヘルメットを着用し、工事現場での作業が疑似できるスペース。Eliaceと一緒に時間も忘れて遊んでいた。そのセットがよくできていて、なかなかの人気だった。いわゆる、職業体験だ。
 
 ここでは、イベントや展覧会もよく催されていて、何年か前に“Star Wars”『スターウォーズ』の展覧会があった。スターウォーズをフランス語風で言うと”スターワー”。最近はこんな感じで、何のことかわかりやすいのだけど、まだまだ、映画や本のタイトルはフランス語に訳してしまうことも多々ある。La guerre des étoiles(ラ ゲール デ ゼトワール)がフランス語で言う、『スターウォーズ』。 ラ ゲールは『戦争』、デ ゼトワールは『星』という意味なので、そのままなのだ。すぐにはぴんとこないけど、あー、『スターウォーズ』ねと感づく。ややこしい。でも、邦題の全然違ったタイトルにしてしまうよりはましか。。
 話は逸れたけど、パリの外れのこんな場所を訪れるのも、たまにはよい。

2014/08/12

ランドセル


 中学時代、私の通っていた中学校は、校則で男の子は全員丸刈りだった。部活動に限らず、みんな坊主だった。それに同じ学ラン姿だと、誰が誰だかわからない。それは稀だとしても、日本では、小学生はランドセル、中高生は制服を着ることも未だ珍しくない。フランス人の友達は制服やランドセルを見ると、興奮気味にこう言った。「いいよね、フランスにもあればいいのに」
 確かに、毎朝の洋服選びの面倒さはないし、お金もかからなくていいかもしれない。でも、毎日制服を着るのは不衛生だし、みんな同じっていうのもなぁ。
 
 フランスの小学校は、制服も体操服もないし、ランドセルもない。Cartable(カルターブル)という、様々な柄を選べるリュックはあるけれど、重い荷物を入れたカルターブルは身体によくないと、Marieの娘 Dianeはキャリーケースで、コロコロしながら通学していた。
 
 今、海外ではおしゃれな大人の間で、ランドセルが流行り始めているらしい。確かに、丈夫だしリュック型で持ちやすいし、今は、色も形も多様化していて確かにかわいいかもな。いや〜、でも安くないのにな。

2014/08/11

Tatouage


 息子の休みが一日と半日しかなかったけど、久しぶりに温泉へ行った。ヴァカンスだからなのか、日本人だけでなく、海外からも多くの旅行者が来ていた。
 
 そういえば、もうかれこれ15年ほど前になるけど、フランス人のIsabelleとケベック人のIsabelleと温泉に行ったことがある。ちょっとややこしいけど、呼び分けることもなく、私はふたりをIsabelleと呼び、ふたりは互いにIsabelleと呼び合っていた。一時期、3人でかしましく行動を共にしていたのが懐かしい。なかなか裸の付き合いをすることのない外国人だけど、ふたりとも温泉をいたく気に入り、後に銭湯にもはまっていた。
 それはさておき、ケベックのIsabelleには、足首に小さなクローバーのタトゥーが入っていた。ほんとに小さなタトゥーで、それを隠して温泉に入ったけれど、文化やタトゥーの在り方の違う外国人には、なぜダメなのか少しだけ、理解に苦しむようだ。
 Ericの娘、Sauvane(ソヴァンヌ)が日本に来た時、真剣な顔でこう言った。「日本に来てから、タトゥーを入れればよかった」彼女の背中には、ほんとに飛べそうなくらいの翼のタトゥーが入っている。やはりこれだけ目立つと温泉には入れないのだという。パパのEricも、日本人びっくりの本気タトゥーが体中に入っている。
 フランスでも他の国でも、タトゥーはファッションの一部として根付いているわけだし、大好きなサッカー選手も当たり前のように入れている。これはもう、認めるしかないんじゃないかと私は勝手に思っていて。。それでもダメと言うなら、せめて、かわいいタトゥーは良しにしてあげてほしいな。

2014/08/10

ハエ取り紙


 今年は暑いのかそうでもないのか、何だか変な感じだ。例年に比べて、朝晩は過ごしやすいし、ひと雨降ると、ちょっとずつ気温が下がるのを感じる。でも、きっとこれから残暑やら本来の暑さで、暑くなるのかなとも思うけど。そのせいか、蚊の出現が少ないように感じる。毎年、我が家の玄関前には待ってましたとばかりに、蚊たちが扉が開く隙を狙っているのだけど、今年はあまり見かけない。虫の出現で夏を感じたりするのにな、と思うとちょっと寂しい気もする。
 
 そういえば、パリでは虫をあまり見かけない。蚊に刺されることも滅多になかった気がする。都会ならではなのか、ハエも見かけない。そうだ、東京でもいわゆる普通のハエって見ないな。
 パリでは見かけない蝶や昆虫が、フランスの田舎にはたくさんいる。もちろん、ハエも飛び回っていた。ノルマンディーのAlainの実家に遊びに行った時、ハエ取り紙が天井からぶら下がっていた。家畜農家なので、ハエが常に出るらしいのだけど、何だか昭和の日本を思い出した。もっとハイテクなものもあるけれど、これが一番よく取れるらしい。勝手な想像だけど、ハエ取り紙って日本のものだと思っていた。あらま、フランスにもあったのね。

2014/08/09

果物


 暑い日には、何だか瑞瑞しいものが食べたくなる。喉を潤すための水分だけでは、干涸びてしまいそうだからだ。そんな時、果物がやっぱり一番だ。

 フランスでは、Marchéに行くと、色とりどりの果物が並んでいて、目でも食欲を満たしてくれる。家庭によって、果物の出し方は様々だけど、フランスでは大きなかごやボウルに盛られた果物を、各自が好きなように食べる。日本では丁寧に皮を剥いてお皿に盛って出すことが多いけど、フランスでは小さな子供でも各自、好きなものを好きなだけ、時にはナイフを使って器用に食べるのだ。しかも、皮や種は面倒だからか、おいしいからか、そのまま食べちゃうことも多い。りんごやプラムはもちろん皮付きだし、ぶどうも皮、種付きで食べてしまう。大きな種もへっちゃらだ。私も、そんなワケでいろんな果物を、皮ごと食べることに慣れてしまった。皮なしのほうがおいしいものもあるけど、例えば、巨峰は皮ごと食べるほうが、断然おいしい。
 皮ごと食べれると、いつでもどこでも食べられて、便利だ。でも、外出中、皮を剥きたくなったときのために、Marieはダッシュボードに小さな果物ナイフを入れてたな。  

2014/08/08

HARIBO



 本日、150回目となったこのブログ。節目の回は写真多めのちょっと張り切ったものにしているのだけど、今回は何にしようかな、と考えている時、ふと”HARIBO”(アリボー)が頭に浮かんだ。いわゆる、グミのことだ。本家のドイツでは「ハリボー」と言われているけど、フランス語では『H』の発音はしないので、アリボー。
 
 日本でも輸入食料品店やスーパーに置かれているので、馴染みの深いアリボー。日本と同様、フランスの子供たちもグミが大好きなので、どこのスーパーにもアリボーがずらっと並んでいる。ちょっとしたおやつにもなるし、おみやげにもなるので、いつも何個か買って帰るのだけど、重量が割とあるので、どれを買うのか、厳選するのに一苦労だ。
 子供が大好きなグミは、ちょっと弾力のある、言い方は悪いけどゴムっぽいやつだ。でも、グミとゼリーの間のようなのが、私はけっこうお気に入りだ。ピーチなどのフルーツ味やコーラ味も捨てがたいけど、最近は、形はカエルでお腹の部分はマシュマロとか、フライドポテトの形だけどレモン味っていうのも人気らしい。
 
 ヨーロッパでは昔から親しまれている、見た目は黒い、カタツムリのようなタイヤのような形の”Lakritz”(ラクリッツ)。くるくるとほどいて千切りながら食べるのだけど、味は苦いような渋みのあるような、決しておいしいとは言えない代物。主成分は甘草、いわゆる漢方薬。そりゃ、苦いわけだ。でも、これ、れっきとしたグミだし、子供たちも意外に好きだ。どんな味覚なのか、と思ってしまうけど、小さい頃から慣れ親しんだ味だから平気なのかも。日本でいう納豆慣れみたいなことかな。でも苦いグミなんて、何度食べても、慣れないけど。。スーパーにはもっと美味しいものがたくさんあるから、いいんだけどね。



2014/08/07

生牡蠣


 フランス滞在中、きっと誰しも楽しめるところ、Marché(マルシェ)。パリのマルシェも様々で楽しいけど、田舎のマルシェは、その地方特有のものが集まり、わくわくする。

 Elianeに連れて行ってもらったMédoc(メドック)のマルシェには、生牡蠣が食べられる立ち食いバーなるものがあった。真夏の昼間に外で生牡蠣が食べられるなんて、日本じゃ考えられないけど、これがまた、格別な味。その場でレモンを搾って、冷えたChampagne(シャンパーニュ)『シャンパン』を片手に、朝から食べられる幸せ。フランス人のヴァカンスは、朝早くからこの調子だ。下手すれば、朝はここでシャンパン、昼ごはん時はワインを飲んで、日中はビール、そして夜も。。
 なぜだか、フランスでは、一日中飲んでも酔っぱらうってことがない。ヴァカンスだから酔ってもいいやと思うからなのか、天候や湿度の違いからなのか、なぜなんだろう。とにかく、朝からお安く堂々と飲める、田舎のマルシェの生牡蠣バー、一度お試しあれ。

2014/08/06

Camping naturiste


 こうも暑いと、涼しいことを考えなければ、やってられない。服を着ていなければ、ちょっとは涼しいのだろうか、なんて思いつつ、そんなことしたらどこにも行けないし、誰にも会えなくなっちゃうなとか、考える。
 
 そういえば、Elianeの実家近くに“Camping naturiste”(キャンピン ナテュリスト)なるものが存在する。外から見ると高い柵に囲まれ、中を窺い知ることはできない。でも、雰囲気は何だか普通のキャンプ場のようだ。中で暮らす人たちは、みんな裸なのだそうだ。裸で暮らす理由は様々らしいけど、何もかも脱ぎ捨てようってことなのか。。
 「フランスには何カ所かこういうところがあるわよ。日本にはないの?」「うーん、たぶん」「見学してみたい?」「えっ、まさか裸で?」「大丈夫、見学者は服を着てても」
 Isabelleの実家ではプールで泳ぐ時、みんなトップレスだったし、そういえば、スペインのバルセロナ近くのトップレスビーチへ行ったこともある。みんなが上をつけていないところで、自分だけつけているのは何だか悪いことをしている気持ちになって、脱いだはいいけど、うつ伏せでじっとしていた経験がある。それを思い出してしまった。
 「やっぱり、いいや。また今度にする」とElianeに言ったけど、あ〜、見に行っちゃえばよかったな。今さらだけど、何か気になる〜。

2014/08/05

ニック?


 フランス語の発音はちょっとだけ、ややこしい。でも、英語と同じようにAlphabet(アルファベ)と発音記号に慣れれば、どんな言葉も読めるし、言えるようになる。Alphabetも”アルファベット”ではなくて、”アルファベ”と読む。規則性を覚えれば、簡単だ。
 でも、ちょっとややこしい話。フランスでは、フランス語のみが公用語と位置づけた、言語政策が存在する。フランスでは、英語をわざわざフランス語読みに直して言ったりするのだ。
 ある時、フランス人の友達がこんなことを言った。「僕はニックが好きなんだけど、日本でも人気ある?」ニックって誰?よく聞いてみると、ニックってNIKEのことだった。「ナイキって言わないの?」「人にもよるかな」えーっ、別にナイキでいいんじゃないと思うけど。。こんなこともあった。Robert de Niro(ロバート デ ニーロ)を『ロベール ドゥ ニーロ』なんて平気で言ってしまう。ただし、日本語読みでもずいぶん日本語風に変わってしまうわけだから、おんなじことか。

 ある年、パリへ向かう前に、おみやげは何がいいか友達に尋ねた。「エヌアッシュカの子供向けのDVDが欲しいな」エヌアッシュカ?「あぁ、NHKね〜」フランス語読みでこう言うのだ。日本のものは日本語でいいんじゃない? 

2014/08/04

Paris Plages


 夏になると、パリのど真ん中に突然現る、Paris Plages(パリ プラージュ)。Plageとは、『浜辺』という意味だ。7月から8月にかけて、セーヌ川ほとりとla vilette(ラ ヴィレット)の車道を封鎖して、砂浜を作ってしまうのだ。椰子の木、デッキチェア、パラソルまで持ってきちゃう。ビキニ姿の女子が肌を焼いていたりしていて、本物のビーチさながらだ。
 
 出来た当初、ちょっと冷ややかな目で見る人も多かった。実際、人もまばらで、きっと来年にはなくなってしまうんだろうなと思ったほどだ。そんな予想をよそに、12年経った今では、夏のパリの風物詩となっている。
 日帰りで海へ行くことが難しいパリ。なら作っちゃおうって、作っちゃったここなら、海気分を味わうことができる。パリの散策途中にセーヌ川のほとりで、ビーチ気分を味わいつつ、ピクニックなんていうのも楽しい。野外ステージでは、お芝居やライヴが定期的に行われ、スポーツができるスペースや仮設プールもある。子供たちは浜辺と同じく、砂遊びしたり、ミストシャワーで水遊びしたり、ワークショップに参加したり。大人にとっても子供にとっても、盛りだくさんだ。
 ほんとの海のほうがいいに決まってるけど、Paris Plagesも楽しいからパリに行ったら、ぜひ。

2014/08/03

Mylène Farmer


 フランス人の友達によく言われる。「今、これが日本で流行っているって、ほんと?」「フランスでも大人気でしょ?」「うーん」この温度差は常にある。どこそこのチョコレートだったり、何とかっていうチーズだったり。いや、もちろんフランスでも売られているし、そこそこ人気もあるけど、日本ほどの知名度はないらしい。これは人にも言えると思う。日本とフランスで知名度の高い人は違う。日本で映画が公開されたからとか、誰かの歌をカヴァーしたとか、そんな理由で名前と顔が一致するからってこともある。
 日本でフレンチポップ、ボサノヴァを歌い、日本の曲もカヴァーする女性シンガーも、フランスだと知っている人はあまりいない。少なくとも私の友達には知っている人はいなかった。日本人が作り上げた、虚像というものが少なからずあるのは否めない。でも、それが悪いワケでも何でもないんだけど。。

 フランスで絶大な人気を誇る、Mylène Farmer(ミレーヌ ファルメール)というアーティストがいるけど、日本ではほとんど無名だ。もうすでにアラフィフの彼女だけど、いまだにヨーロッパ圏でも人気があるらしい。デビュー当時、マイケル ジャクソンばりのPVだったり、マドンナ顔負けのステージで人気を集め、フランスでは異色の存在だ。たぶん、フランス人なら誰でも知っている、そんなミレーヌ ファルメール。
 ちなみに私もあまり好きでないのだが、好きとか嫌いとかを除いて、ほんとのフランスを切り取って知ることの出来るひとりだと思う。

2014/08/02

Louis Malle


 映画と本の話は、始めると止まらなくなるから要注意なのだが、前回に続き、今回も映画話。フランス人は大雑把で、およそ繊細さの欠片も感じない部分もあるのに、映画の中では緻密でこの上なく精巧かつ計算されていて、でもより自然な風景を切り取るのがうまいと思う。
 Louis Malle(ルイ マル)監督の”Au revoir, les enfants”『さよなら、子供たち』や”Zazie dans le métro”『地下鉄のザジ』、両極にあるこの作品だけど、どちらを観ても思うのが、非日常的な日常を切り取るのがうまい監督だということだ。
 “Ascenseur pour l'échafaud”『死刑台のエレベーター』はルイ マル監督の作品の中でも名作中の名作だ。Jeanne Moreau(ジャンヌ モロー)の美しさ、即興とは思えないMiles Davis(マイルス デイヴィス)のトランペット、恐怖感を駆り立てるカメラアングル。どれを取っても、素晴らしい。
 
 パリに暮らしていた頃、何度か『砂の女』がテレビで流れていた。私の好きな作家、安部公房の秀作、そして、若かりし頃の妖艶な岸田今日子が出ているのだが、この映画と「死刑台のエレベーター」は私の中では重なる。女の怖さとか、その世界に入ってしまうと逃れられない、何かが似ているんだと思う。フランス人の友達にも『砂の女』好きが多い。昔のフランスと日本の映画は、相通じるものがあったなと感じる。

2014/08/01

François Ozon


 映画を観るならフランス映画、なぜなら好きな監督がたくさんいるから。言わずと知れたヌーベルヴァーグは永遠のテーマだし、Gaspar Noé(ギャスパー ノエ)のような奇才の監督作品も観てきた。
 だから、一番好きな監督を挙げるのは難しいけど、お気に入りのうちのひとりが François ozon(フランソワ オゾン)。ここ近年、フランスの映画界を牽引する人物である。私が初めて観た映画は"Sitcom"『シットコム』という、家族を題材にした作品だ。ホームドラマと言えば聞こえはいいけど、人間の奥深いところを突いた、かなりシニカルで、おどろおどろしい、でもコメディ映画。
 
 この監督を有名にさせたのが、”Sous le sable”『まぼろし』や ”8 femmes”『8人の女たち』で、往年の大女優、Charlotte Rampling(シャーロット ランプリング) や Catherine Deneuve(カトリーヌ ドヌーヴ)の演技も素晴らしい。これらも好きな作品だけど、でも一番好きなのは “Swimming Pool”『スイミング プール』。フランス映画特有の結末が曖昧で余韻の残る、そんな映画だ。
 この監督のコミカルもシリアスもどちらも好きだけど、ぜひ、おやっと思ってしまう『シットコム』を観て欲しい。この監督の世界観がギュッと詰まったような映画だ。