2014/12/15

夜歩き


 ちょっとこわい話をもうひとつ。パリに暮らし始めてしばらく経った頃、女友達と夜、遊びに出かけた。どのくらいの時間だったか、はっきりは覚えていないけれど、夜中の2時はとっくに越えていたと思う。その日は女友達のアパートに泊まる予定で、話しながら向かっていた。彼女のアパートは某有名な紅茶専門店のある通りで、パリのど真ん中。その時間だとまだ、町行く人もいるし、開いている店もある。でも1本、通りに入ると人影も途絶え、シーンと静まり返っていて、ちょっぴりこわい。パリの夜歩きは危ないことはわかっていたけど、町のど真ん中だし、ふたりだし、かなり警戒しながら歩いていたから、ちょっと油断していたかもしれない。

 私は手ぶらで、彼女はポシェットを手に持っていた。鍵とたばこが入っていた小さなポシェットには、細い紐がついていた。彼女は話しながら、子供がするみたいにぐるぐるとポシェットを振り回し、紐が何重にも指に巻き付いていた。
 そこへ、いつからつけて来ていたのか、男がやって来て、そのポシェットを奪い取ろうとした。でも、ぐるぐるに巻き付いた紐がジャマをして、男とポシェットを取り合う形になってしまった。「痛いから離して〜」と叫ぶ女友達と早く持って逃げたい男。「もう、 離した方がいいよ」「ぐるぐる巻きになってて、指から離れない〜」そんなこんなで格闘するうちにポシェットは指から離れ、それを持った男は一目散に逃げて行った。あ〜、怖かった。。けど、 ポシェットを取り合うふたりの姿がまるで、コントのように浮かんできてちょっとおかしくなった。ごめん、ごめん。でも、大事にならなくてよかった。
 彼女のアパートの鍵は盗まれたポシェットの中。。結局、ウチまで歩いて帰り、後日、彼女は念のためにアパートの鍵を取り替えた。とにかく、夜歩きは気をつけよう。
 

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