2014/12/07

Minitel


 ずいぶん前に、まだパソコンが一般的でなかった頃に、フランスではMinitel(ミニテル)という端末が家庭に設置されていた。見た目は、昔のテレビのようなパソコンのようなもの。紙の電話帳の代わりのもので、要するに名前などの情報を入れると、電話番号が調べられるものだ。有料のものだと、列車や飛行機のチケット予約、ホテルの予約、オンラインショッピング、生活情報、そしてチャットなんかもできちゃったらしい。
 私が暮らしている頃にはあまり見かけなくなっていたけれど、まだまだ、パソコンなどのインターネットサービスも普及しておらず、あるところにはあった。けど、そんなに便利に使いこなしている人もいなくて、存在すらも薄れていった頃。。
 
 ある時、留守にしていた友達の家の空気の入れ替えを頼まれた。友達のアパートにさぁ出かけよう、と鍵を手にしたのはいいけれど、閉めた途端、自分ちの鍵を持ってないことに気付いた。時すでに遅し。。オートロック式の部屋の扉は完全に閉ざされてしまった。スペアの鍵はもちろん、部屋の中。。
 薄っぺらいカードを扉の隙間に差し入れて開けようとしたけど、これもダメ。まっ、これで開いてしまったら、泥棒にも簡単に入られちゃうからダメだけど、万が一と思い、もう一度やってみるも開かず。中庭に面した窓から、なんてそんなスパイダーマンみたいなことはできない。しかも、4階だし。。中には愛猫ポチが居る。「ポチ〜、ポチ〜」と叫んでも、当たり前だけど開けてくれる気配もなく。。
 
 大家さんに合鍵を借りなきゃ。でも、 そのアパートの大家さんは部屋ごとに違うから、ウチの大家さんを知っている人が、このアパートにいるのかどうかすらもわからない。フランスでは直接契約も多く、仲介の不動産屋もいない。大家さんの電話番号も知ってはいるけど、書かれた契約書は部屋の中だ。とにかく、共通の知り合いがいないのだから、困り果てた。で、ふと”ミニテル”と思ったのだ。辛うじて大家さんの名前は覚えていた。そして、はっきりではないけれど、郊外のこの辺りに住んでいると、世間話ついでに聞いたのを覚えていた。あとは、”ミニテル”。そういえばウチのアパートの1番下の階の事務所 にあったのを思い出し、事情を話して、貸してもらった。
 大変だったか、簡単だったか、すっかり忘れてしまったけれど、何と大家さんを見つけることができた。そして、大家さんの住む郊外の町にて、合鍵を受け取ることができた。
 後にも先にも、鍵を閉じ込めたのも、”ミニテル”を使ったのも、この時一回限りだ。過ぎてしまえばいい思い出、かな。

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