2015/04/16

住処


 初めてパリを訪れた時、一日中、街を歩き回って、暗くなった中、ホテルに戻るとすごくほっとしたのを今でも覚えている。別に何てことないホテルだったけれど、長期滞在の住処ってことである意味、我が家だったのだ。だから、ホテルの周りは詳しくなったし、気に入った雑貨屋さんの前を通っていろんなものを眺めるのが日課になっていた。

 暮らし始めた頃、その通りを歩いてみたけれど、ほとんど何もない、なぜそこが気に入っていたのかすらもわからない通りだった。だから、その後、その通りに行くこともなくなり、すっかり存在自体も忘れていた。。
 帰国が決まり、銀行の口座を閉めるために訪れた場所が、まさにその雑貨屋さんのある通りで、帰るために訪れたのに戻って来た、という気持ちになった。その雑貨屋さんを覗いてみたけれど、別に特別なものは何もなくて、なぜあの頃、毎日のように立ち寄っていたのかわからなかった。でも、近所を散歩している感覚で落ち着いていたんだろうな、と今になって思う。
 ホテルに帰ると、お風呂に入って次の日の予定をたてるのが楽しみだった。もうひとつの楽しみは天井高くに設置されたテレビで、その時期やっていた全仏オープンの観戦。テニスならではのあの緊迫感とちょっとさみしいホテルの雰囲気が何か好きだった。あれ以来、テレビでテニスを観るのが好きになった。
 あの雑貨屋さんは今でもあるのかな。あったら覗いてみたい。

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